低用量ナルトレキソン

低用量ナルトレキソン(LDN)とは

ナルトレキソンは30年以上前から麻薬中毒、アルコール依存症、盗癖の治療薬として使われていた内服薬です。
しかし最近の癌治療に関する臨床研究結果から、少量のナルトレキソンの投与が癌細胞の成長・分裂・アポトーシスをコントロールするとして注目されています。
さらに低用量ナルトレキソン療法は、エイズや多発性硬化症・パーキンソンなどの疾患に対しても効果があることから注目されています。

ナルトレキソンの歴史

1981年にIan Zagon らはマウス神経芽細胞腫モデルで少量(0.1mg/kg)ナルトレキソンの投与が腫瘍の増殖抑制・寿命延長することを示した。
1985年に、ニューヨークのBernard Bihari医師は少量のナルトレキソンがHIV患者の免疫反応性を高めることを発見。
1990年半ばにBihari医師はLDNがガン患者の一部、SLE等の自己免疫疾患に有効であると示唆。

低用量ナルトレキソンによる腫瘍増殖抑制の機序

血流中のメトエンケファリン(副腎髄質で多量産生されるエンドルフィン)およびベータエンドルフィンの上昇を誘発する。
腫瘍細胞膜上のオピオイド受容体の数・密度の増加を誘発することにより、既存濃度のエンドルフィンの増殖抑制効果に対する受容体の反応性を高めて、癌細胞のアポトーシス(細胞死)を起こす。
エンドルフィンの濃度上昇に反応してナチュラルキラー(NK)細胞の数および活性、リンパ球活性化CD8細胞の数を増加させる。
2006年9月よりミネソタ大学メソニック・ガンセンターは国立癌研究所と共同で「ホルモン療法に反応しない乳癌の転移病変に対するLDNの効果」をPETで評価する第2相臨床試験を実施している。

低用量ナルトレキソン(LDN)療法の効果が期待できるガン

膀胱ガン、悪性黒色腫、乳ガン、多発性骨髄腫、カルチノイド、神経芽腫、結腸・直腸ガン、卵巣ガン、子宮ガン、神経膠芽細胞腫、膵臓ガン、肝臓ガン、前立腺ガン(無治療)、肺ガン(非小細胞肺がん)、腎細胞ガン、リンパ球性白血病(慢性)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、咽喉ガン

結論

低用量ナルトレキソン(LDN)療法による癌治療は、高濃度ビタミンC点滴治療や化学療法剤などの、癌細胞を殺す治療法ではなく、ガン細胞の成長・分裂・アポトーシスをコントロールする治療法である。
したがって、従来のガン治療や高濃度ビタミンC点滴と併用して治療が行えます。

治療方法

1日1回就寝前に1カプセル(3mg)を服用します。

副作用

不眠や鮮明な夢を見ることがあります。服用開始2週間くらいで慣れてきます。
継続が難しい場合は、メラトニンと一緒に服用するか、起床後に服用します。
多発性硬化症やパーキンソン病では、一時的に症状が悪化することがあります。